【連載コラム】倉庫業務マネジメント~つながる DX、WES の役割~第4章 | 倉庫管理/WMS 株式会社シーネット(C_Net)

【連載コラム】倉庫業務マネジメント~つながる DX、WES の役割~終章

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『倉庫業務総合研究会』の渡辺秀治氏による連載コラム、終章では『WESとは何か」そして「未来像」をお届けします。

 
<第1章 概要 はこちら>
<第2章 アクティビティの定義 はこちら>
<第3章 オペレーションマネジメントの詳細機能 はこちら>
<第4章 WESのアクティビティと連携情報 はこちら>
<第5章 業務事例によるWES適用についての提言 はこちら>
 

終章

終章

  1. 1) WESとは何か
  2. 2) 「つながる物流」の未来
  3. 3) おわりに
 

1) WESとは何か

日本国内の2020年ごろまでの好景気、インバウンド需要の拡大、EC市場の拡大などの状況とともに、物流業界(倉庫業・貨物運送業)では、慢性的な人手不足が顕在化した課題としてとらえられるようになりました。
 
倉庫内の業務は、2020年以降の新たな物流を構築するべく、変革し始めています。さまざまなマテハン機器に対して、個々に開発されたAPI(Application Programming Interface)でも現場の要求に応えることは可能です。しかしながら、WESを構築し、多くのマテハン機器を統合、連携することが、変革を進めるための近道になります。
 
序章では、WMSの領域と、WCSの領域について、2つの領域を埋める領域としてWESがあり、物流DXの推進に不可欠であると考えられると述べました。また、自動機を使った生産性向上を伴う業務改善と、企業・組織の物流業務全体のマネジメントを可能にする情報システム群の構築がWES成功のキーであるとも述べました。まさに変革への近道はWESの構築なのです。
 
マテハン機器にデータを送信し、その実績を収集することについては、従来から実装されているシステムであり、現在において、突如、発展してきた技術ではないことはご承知の通りであるかと思います。Warehouse Execution System(倉庫実行システム)、WESという言葉は、欧州、米国で先行しており、日本国内においては、2021年ごろから少しずつ広がり始めているように思います。
 
改めて、各章を通じて述べてきたことは、「WESとは何か」ということについて、体系的に定義し、まとめたにすぎません。これらの定義を、多くの現場での取組と照らし合わせてみると、既にWESは数十年も前から各所に多数導入されているとも言えます。
 
WESとは、従来のマテハン機器を接続する情報技術について、それぞれのシステムが担うべき機能を明確にしたものであります。倉庫業務マネジメントに関する規格がないことにより、WESと物流DXの推進が迷走することは避けなければならないと思います。
 
物流を支える多くのシステムについて、少しでも、WESの原理原則通りに構築することができるお手伝いになっていれば、幸いです。
 

 

2)「つながる物流」の未来

2020年はじめに発生したCOVID-19(新型コロナウイルス)によるパンデミックは、世界的な半導体不足、さらにはあらゆる製品の不足から、物流網の混乱をもたらしました。今までの業務モデルによる、物量の増大=要員の投入が成立しなくなってしまっただけでなく、長期的な工業製品不足現象が続いており、さまざまなメーカーが需要に対応できる製品の供給ができずにいます。そのような状況下において、物流業務は変化し、社会的要求に追従し続けています。
 
パンデミックがもたらしたものは、決して混乱だけではありません。Webミーティングの普及、リアリティとバーチャルの融合技術の促進など、世の中に利益をもたらしたものについて、言うまでもありません。
 
『ギネス世界記録2022』(日本語版2022年11月17日発売)に「記録名:最大のロボット応援団」が掲載されていることについてご存じでしょうか。福岡ソフトバンクホークス株式会社とソフトバンクロボティクス株式会社が開発した、総勢100体の人型ロボットPepper(ペッパー)くんによるロボット応援団が、無観客の中で行われたプロ野球の試合を、エンターテイメントで盛り上げていました。
 
「自律制御」の技術がここまで進化しているのかと、感銘を受けた方も多いのではないかと思います。この技術のすごいところは、「音楽に合わせて」、「乱れることなく」、「一斉に」、ロボットが動くことなのです。これまで述べてきた、倉庫内の業務におけるマテハン機器が、連動して動作するということが、決して夢物語ではないことを実証されているのだと思います。貨物輸送の面でも、自動運転車両の技術やドローン(自律型無人飛行機)技術が、めざましい発展を遂げていることも、付け加えておきます。
 
マテハン機器がインテリジェント化、WCSが発展し、物流の自動化、そして、自律制御が進めば、WMSの機能はさらなる強化が求められることでしょう。マテハン機器やWCSは当然、機能を充実させ、WMSとの隙間を埋めるためのWESは、今後、必要不可欠な存在として注目されることになるでしょう。
 

 

3)おわりに

1990年12月20日に世界初のウェブページが公開された頃、日本では、まだ、WMSが産声をあげたばかりの頃でした。それから30年以上が経過し、情報デバイス、ソフトウェアなどの技術は急速な勢いで発展を遂げました。それとともに、倉庫業務、貨物輸送の現場にも、情報技術が普及してきました。
 
しかし、実際のところ、経営システムと倉庫システム、マテハン機器が柔軟に接続されているか、接続するシステムが柔軟かつ容易に実現できるかについては、まだまだ多くの課題を残していると言わざるを得えません。
 
これまで、多くの「ひと」が関わってきた倉庫業務においては、暗黙知である人や組織が作り上げたノウハウが多数存在することもあり、一部においては、自動化の遅れがあることは否定できない事実であります。
 
世界的な環境変化の中、私たちは、標準的なプラットフォームでさまざまなアクティビティを接続し、「つながるDX」を実現しなければならないと感じます。協調するべきところは強調し、標準的な規格の中で、特徴的な技術を発揮し、競合してゆくことが今後の倉庫業務の中に求められるものではないでしょうか。その、標準的なもののひとつがWESであることを望みます。
 
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<第1章 概要 はこちら>
<第2章 アクティビティの定義 はこちら>
<第3章 オペレーションマネジメントの詳細機能 はこちら>
<第4章 WESのアクティビティと連携情報 はこちら>
<第5章 業務事例によるWES適用についての提言 はこちら>

 
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